弊社Webショップで販売している無機EL発光材料セットを使用して、無機ELの発光実験を行ないました。製作過程も載せていますので、実験や研究などをする際の参考にしていただければと思います。

無機EL発光材料セットはこちら

実験の目的

今回使用する実験セットでは、各材料をスクリーン印刷などで塗工して積層し、最終的に交流電圧を印加することで電界を発生させて、無機ELを発光させることを目的としています。(本題ではない為、詳しい原理等は省略します)

今回作製した無機ELシートの発光動画

製作に必要なもの

今回は、無機EL発光材料セットを使用します。

無機EL発光材料セット
無機EL発光材料セット
無機EL発光材料セットの内容
材料数量
無機EL蛍光体 (粉末、青緑系発光)20g
EL用バインダー14g
誘電体 BaTiO3ペースト30g
カーボンペースト10g
アルミ箔導電テープ6枚
導電フィルム (PEDOTコート済みPETフィルム) 100mm×100mm10枚
別途、ご用意いただく必要があるもの
  • 均一に材料を塗工できる環境  …スクリーン印刷、ハンドコーターなど
  • 塗工した材料を乾燥させる環境 …120-130℃で乾燥可能な恒温槽などが必要です。
  • EL用インバーター(交流電流)  …発光面積に合ったインバーターをご用意下さい。
  • 絶縁材料           …絶縁ビニルテープなど。発光面の裏側は電流が流れますので、絶縁処理を必ず施して下さい。
  • 金属、またはPP(PE)製のヘラ   …インキを混ぜ合わせる為に使用します。

製作方法

今回作製する無機ELシートの積層イメージは下記画像の通りです。

無機ELの積層イメージ

少し長くなりますが、作製の工程は以下をご覧下さい。

① 無機EL層の塗工工程

無機EL蛍光体(20g)とEL用バインダー(14g)を混ぜ合わせて、無機ELペーストを作ります。

EL蛍光体とELバインダー
1-1. EL蛍光体とEL用バインダー
無機EL蛍光体とEL用バインダー
1-2. EL用バインダーの容器に無機EL蛍光体を入れた状態
無機EL蛍光体とEL用バインダー
1-3. 金属、またはPP製(PE製)のヘラでよく混ぜ合わせる

※無機EL蛍光体とEL用バインダーは時間を置くと分離してしまいます。もし分離した場合は、再度よく混ぜ合わせてからご使用下さい。

次に、導電フィルムのPEDOT面(保護剥離フィルムが付いている面)に、ペースト状の無機ELを均一に塗工します。塗工後は、130℃で30分間乾燥します。

無機ELペースト塗工直後
1-4. 無機ELペースト塗工直後
無機ELペースト乾燥後
1-5. 無機ELペースト乾燥後 (乾燥条件: 130℃/30分)
② 誘電体層 (BaTiO3層) の塗工工程

乾燥させた無機EL層の上に誘電体チタン酸バリウム (BaTiO3) 層を形成します。

※注意点※

  • BaTiO3層の塗工サイズは無機EL層と同じ(理想)、あるいは無機EL層よりも少し広めに塗工してください。
  • もしBaTi3層にピンホールがあり、次に塗工するカーボン層とEL層が接触してしまうと発光しません。そのため、BaTiO3層は厚めに(3~4回)塗工する必要があります。
  • BaTiO3の仮乾燥は130℃で10分間程度、本乾燥は130℃で30分間行なって下さい。
チタン酸バリウムの塗工1回目
2-1. BaTiO3ペーストの塗工1回目(仮乾燥後)
チタン酸バリウムの塗工4回目
2-2. BaTiO3層の塗工4回目(本乾燥後)
③ カーボン層の塗工工程

誘電体BaTiO3層の上にカーボンペーストを均一に薄く塗工します。ちなみに、カーボンペーストの塗工部分が最終的に発光する部分になります。

※注意点※

  • カーボン層はできる限り薄く塗工して下さい。カーボン層が厚いと、チタン酸バリウム層との熱膨張率の違いで乾燥時にひび割れが起こる恐れがあります。
  • カーボン層の塗工サイズはBaTiO3層よりも少し小さめに塗工します。絶対にはみ出さないように注意してください。
    → PEDOT面に接触すると、電源を入れたときにショートする恐れがあるため。
  • 塗工後は、120℃で20分程度乾燥して下さい。
カーボン層の塗工
3-1. 絶対にBaTiO3層からはみ出さないこと

※上記画像内の赤い点は、位置合わせをするために赤いマジックを使用したものが写ってしまったものです。無機ELの発光には特に関係ありません。

④ 電極の取り付け

アルミ箔導電テープをカーボン層の上に取り付けます。下記画像を参考に貼り付けて下さい。この部分が電極の片方になります。カーボン層に電流を流すためのものなので、カーボン以外の層やPEDOT面には絶対に触れないように注意して下さい。

アルミ箔導電テープの取り付け
4-1. カーボン層に電極を貼り付ける

次に、導電フィルム(PEDOT面)の隅にカーボンペーストを塗工します。これが電極のもう片方になります。大きさは、下記画像のようにワニ口クリップ等で挟める程度で大丈夫です。

カーボン電極の塗工
4-2. PEDOT面の隅にカーボンを塗工して電極を作る

※電極以外の部分は、絶縁テープ等を使用して全て絶縁処理を施して下さい。

⑤ 交流電流を通電する

EL用インバーターを用意して、ワニ口クリップ等を使ってインバーターと電極部2か所を接続します。

※注意点※

  • EL用インバーターにはそれぞれ推奨面積があります。発光面積に合ったEL用インバーターをご使用下さい。
  • 通電時、発光面の裏側(積層面)には電流が流れます。絶縁処理を行わない状態では絶対に触れないようにご注意下さい。感電する恐れがあります。
EL用インバーターを接続
5-1. 電極部2か所とEL用インバーターを接続

通電後、下記画像のように無機EL層が均一に発光したら成功です。

無機ELシートの発光
5-2. 無機EL層が均一に発光したら成功

各層が均一に塗工されていない、あるいはカーボン層にひび割れが発生していると、上手く電界が発生しません。そのような場合、下記画像のように均一に発光しません。

無機EL発光実験 失敗
5-3. 各層が均一に塗工されていないと、均一に発光しない

以上です。

最後に

今回はできる限り簡単に積層できる構成にしましたが、他にも無機EL蛍光体を発光させるための積層方法は色々あります。

これから無機ELの発光原理について学びたいと思っている方への参考になれば幸いです。

ぜひ無機EL発光材料セットをお試し下さい。

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