フィルムヒーターとは面状発熱体の一種であり、プラスチックフィルムを基材とするフィルム状の加熱用デバイス(電気ヒーター)です。
名前の通りフィルム状なので、「薄さ」「柔軟性」に優れています。
また、薄くて体積が小さいので電源を入れてからの「熱応答性が高い(すぐにヒーターが温まる)」ことも特徴の一つです。
これらの特徴以外にも様々な機能を持つフィルムヒーターがあります。
フィルムヒーターという言葉はあまり聞き慣れない方も多いかと思いますが、意外と身近なところでも使われています。
本ページでは、ヒートラボの主要製品であるフィルムヒーターの原理や構成、特徴などをご紹介していきます。
目次
- フィルムヒーターの原理
- フィルムヒーターの構成
- フィルムヒーターのメリット
- フィルムヒーターのデメリット
- フィルムヒーター取扱時の注意点
- フィルムヒーターの種類とそれぞれの特徴
- フィルムヒーターの活用事例
- フィルムヒーターの温度特性
フィルムヒーターの原理
フィルムヒーターは面状発熱体の一種であり、フィルム状の電気ヒーターです。
フィルム基材上に形成された導電部に電気を流すことで発生する電気抵抗の熱をヒーターとして利用しています。
フィルムヒーターの導電部の形状は大きく分けて2つあります。
- 電熱線タイプ:
ヒーター線となるアルミ箔や銅箔、ステンレス箔などの金属箔や導電性ペースト、銅線やニクロム線などの導線をフィルム基材上に配置したもの。形状にあわせてヒーター線を配置できるため、対応できる形状の幅が広いことが特徴です。
ヒーター線は一本線となっているものが一般的ですが、他にも複数の線をヒーター線を並べて並列に繋いでいる並列ヒーター線などの種類があります。 - 面発熱タイプ:
フィルム基材上にヒーター層となる薄い導電膜(薄膜)を形成したもの。電極をヒーター層の両端に水平に配置することで、電極間の面全体が発熱することが特徴です。
ヒーター層はフィルム上に導電性インクをコーティングしたものや蒸着・スパッタリングで形成された金属膜、金属箔のヒーター線がメッシュ状になって面発熱を模しているものなど様々な種類があります。
電熱線タイプ
フィルム基材上にヒーター線を形成
【製品例】アルミ箔フィルムヒーター、ステンレス(SUS)箔フィルムヒーターなど
面発熱タイプ
フィルム基材上にヒーター層(導電膜)を形成
【製品例】透明フィルムヒーター(薄膜型)、CNTヒーターなど
フィルムヒーターの構成
フィルムヒーターの構成は、大まかにはヒーター線またはヒーター層(導電層)をフィルムで挟んで絶縁した積層構成になります。
電熱線タイプと面発熱タイプのヒーターでは積層構成が少し異なる部分があります。
ここではタイプ毎にフィルムヒーターの基本的な構成をご紹介致します。
電熱線タイプのフィルムヒーターの構成
電熱線タイプの場合、基本的には金属箔と樹脂フィルムを貼合せた複合材料(例: FCCLやAL/PETフィルム、SUS/ポリイミドフィルム等)を用意して、金属箔をエッチングしてパターニングします。
金属箔面は絶縁する必要があるので、上からPETフィルムやポリイミドフィルムなどのカバーフィルム(絶縁フィルム)を貼り合せて絶縁しています。
電熱線素材の種類:ステンレス箔、銅箔、アルミ箔、導電性銀ペースト、導電性銅ペースト、銀ナノペースト etc.
面発熱タイプのフィルムヒーターの構成
面発熱タイプのヒーターの場合、基本的にはフィルム基材上にコーティングや蒸着(スパッタリング)等の手法で導電層を形成します。
ヒーターとして機能させるには両端に電極が必要になり、スクリーン印刷や導電性テープ等で導電層の上に電極を形成します。このとき、面全体を均一に発熱させる(電流を流す)ためには電極は水平でなければなりません。
導電層や電極は絶縁する必要がありますので、これらの上からPETフィルムなどのカバーフィルム(絶縁フィルム)を貼り合せて絶縁しています。
導電層(導電膜)の種類:ITO(酸化インジウムスズ)、PEDOT:PSS、CNT(カーボンナノチューブ)、Ag合金、銀ナノワイヤ etc.
フィルムヒーターのメリット
極薄
フィルムヒーターの特長としては、まずヒーターの厚みがかなり薄いことが挙げられます。
一般的なフィルムヒーターの厚みは約0.1~0.3mm程度であり、従来からある面状発熱体のシリコンラバーヒーターの厚みが約1.8mm、コードヒーターをアルミ箔で包んだアルミ箔ヒーターの厚みが約3mmであることを考えると、フィルムヒーターの厚みが断然薄いことが分かります。
熱応答性の良さ
フィルムヒーターの体積が小さいため、熱応答性が高い点が挙げられます。
つまり、スイッチを入れた瞬間に発熱し始め、短時間で最高温度まで達することができます。
上記グラフは規格品の参考温度データです。印加したそれぞれの電圧(つまり電力値)によって最高温度は異なりますが、いずれも印加30秒後には最高温度付近まで達していることが分かります。
軽量
ヒーターのサイズにもよりますが、ヒーター自体は数グラム~数十グラム程度の重量です。
柔軟性(フレキシブル性)の高さ
フィルムが薄く柔軟性が高い点が挙げられます。
量産時のコストメリット(アルミ箔フィルムヒーター)
アルミ箔フィルムヒーターは一部工程をRoll to Roll方式で量産することが可能なため、量産時のコストメリットに定評があります。
また、ステンレス箔や銅箔よりもアルミ箔の方が安価に入手可能なため、材料費をみてもコストメリットが期待できます。
フィルムヒーターのデメリット
熱容量をあまり大きくできない点
アルミ箔フィルムヒーター:電力密度上限 1.0W/cm2程度まで。
透明フィルムヒーター:電力密度上限 0.5W/cm2程度まで。
耐熱性
フィルム及び粘着層の耐熱性に依存してしまう為、他素材のヒーターと比べて耐熱性が低い点が挙げられます。
PET基材:常時使用温度 100℃程度まで。
ポリイミド基材:常時使用温度 180~200℃程度まで。
版代などイニシャルが掛かる点
数量1枚だけの試作でも下記に挙げられるコストが発生してしまう点が挙げられます。
- スクリーン印刷版代
- 回路設計費(主に電熱線タイプ)
- 材料費や工賃等の試作費用
そのため、フィルムヒーターの試してみたい、味見したいという方向けに、各ヒーターの評価用サンプル(規格品)をご用意しています。もし評価用サンプルにご興味のある方はWebショップをご確認ください。
ヒートラボWebショップはこちら
フィルムヒーター取扱時の注意点
1. 耐折性 (曲げには強いが、折りには注意が必要)
フィルムヒーターにはフレキシブル性があり曲げには対応できます。しかし、フィルムを追ってしまうとヒーター線や薄膜が断線して通電しなくなる懸念があります。
2. 耐用年数
使用環境や使用条件によってかなり差がありますので一概に耐用年数を決めるのは困難ですが、メーカー公表値としては1~2年での交換を推奨しております。
3. 防水性
フィルムヒーター自体に防水性はありません。
防水対策をせずにそのままの状態で水中で使用することはできません。
フィルムヒーターの種類とそれぞれの特徴
分類 | 製品名 | 特徴 |
アルミ箔フィルムヒーター | AL/PETヒーター | 極薄、軽量、フレキシブル、100℃耐熱、異形対応可、量産コスト削減 |
AL/PI(ポリイミド)ヒーター | 極薄、軽量、フレキシブル、200℃耐熱、異形対応可 | |
透明フィルム ヒーター |
Ag薄膜透明フィルムヒーター | 高透明、薄膜、フレキシブル、低抵抗、極薄、軽量、100℃耐熱 |
透明導電性樹脂ヒーター | 高透明、薄膜、高抵抗、極薄、軽量、フレキシブル、100℃耐熱 | |
銅ストライプ透明ヒーター ※開発品 | 高透明、微細線、極薄、軽量、フレキシブル、100℃耐熱、異形対応可 | |
印刷ヒーター | CNTフィルムヒーター | 遠赤外線の輻射熱効果、極薄、軽量、フレキシブル、100℃耐熱 |
成形用印刷ヒーター ※開発品 | 成形性、異形対応可 | |
めっきヒーター | 3D対応めっきヒーター ※開発品 | 賦形性、細線パターン |
フィルムヒーターの活用事例
各製品ページの用途事例・活用イメージをご参照下さい。
フィルムヒーターの温度特性
フィルムヒーターの温度特性はそれぞれのヒーター容量によって異なりますが、電圧を印加してからの昇温が速いという点は全体的な特徴です。
弊社ホームページには、弊社規格品(評価用サンプル)を用いた各電圧条件での参考温度データを掲載していますので、ご参考にしていただければと思います。
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